「デジタルのチカラで、持続可能なインフラ創造に貢献します」をミッションに掲げ、インフラ領域に特化したソリューションを提供するCalTa株式会社。2025年、同社はデジタルツインプラットフォーム「TRANCITY」のリニューアルを検討。現状の課題抽出や、その後の開発についてクラスメソッドに支援を依頼し、2026年3月に新バージョン「TRANCITY Nebula」をローンチしました。TRANCITY Nebula開発の経緯やプロジェクトについて、同社の吉永さん、熊谷さんにお話をうかがいました。
将来の機能拡充を見据えアーキテクチャやUIを根本から見直す
CalTa株式会社は、鉄道をはじめとしたインフラ事業者や自治体へ向けて、デジタルツインプラットフォーム「TRANCITY」や、広域な点群データを効率的に取得できるソリューション「CalTa M42」を提供し、業務効率化や安全性向上に貢献しています。
TRANCITYは、アップロードした動画から3Dモデルを自動生成し、時系列情報を組み合わせた4Dデータとして現場の状況を可視化します。これによりデジタル空間上でインフラ点検が行えるようになり、少人数での効率的な管理を実現しました。2022年6月のローンチ以降、その利便性が評価され、グッドデザイン賞や国土交通省主催「インフラDX大賞」優秀賞、CEATEC AWARD 2024 デジタル大臣賞などを受賞してきました。一方で、TRANCITYの機能をさらに拡充するにあたり、同社は課題を抱えていたといいます。
「UIのわかりにくさは懸念事項でした。TRANCITY自体がスピード重視で開発されたこともあり、UIを細部まで詰めきれず、操作が分かりづらい画面になっていたんです。さらに機能追加のたびにレイアウトが変わり、ユーザーからは『ボタンがどこにあるか分かりにくい』といった声も挙がっていました。リニューアルをするのであれば、画面レイアウトの見直しも避けては通れないと考えていました」(熊谷さん)
4ヶ月にわたる現状分析でUI/UXの改善策を提案
同社がクラスメソッドに支援を依頼したきっかけは、2024年6月に開催されたAWS Summit Japan 2024だったといいます。
「以前からクラスメソッドの存在は知っており、『AWSと言えばクラスメソッド』だと認識していました。会場内でクラスメソッドのブースを見かけ、改めてAWS関連の実績を知り、声をかけてみようと思ったんです」(吉永さん)2025年2月、同社はリニューアルに向けた「体験向上支援」をクラスメソッドに依頼。まずは現状のTRANCITYが抱える問題点と、その改善策を探るところから始めました。
最初の2ヶ月は問題点の洗い出しを中心に行い、これまでTRANCITYユーザーから受けた要望を分析するだけでなく、クラスメソッド社内でもユーザーインタビューを実施。過去に品質管理や生産管理に携わった経験を持つメンバーを集め、実際にTRANCITYで特定のタスクを遂行してもらい、どういった操作でつまずいてしまうのかを分析しました。
「クラスメソッドのプロジェクトメンバーにも、TRANCITYの主要機能を体験したうえでレビューをしてもらいました。緊急度や重要度を分けて、使いにくい部分を丁寧に指摘いただいただけでなく、画面を閉じたときの感触や、ボタンを押したときの反応など、手ざわりに近い部分までしっかり見ていただいたことが印象に残っています」(熊谷さん)
後半の2ヶ月はさらに分析を深め、具体的な改善策の検討を行いました。クラスメソッド側で、リーンキャンバスやインセプションデッキ、ユーザーストーリーマッピング等のフレームワークを使い、検討に必要な情報を整理。これらを踏まえ、デザインやUIの方向性について提案を受けたといいます。
「改善案には、見た目や使い勝手の改善に留まらず、『TRANCITYによってどのようなユーザー体験を提供するか 』といった内容まで含まれていました。ペルソナを置いたうえで、TRANCITYの試用から契約に至るまでの動線なども検討されており、リニューアルに向けた下地を敷いていただいた感触がありました」(熊谷さん)
リニューアル版で生成AI関連機能を実装
4ヶ月にわたる改善点の洗い出しと並行して、同社はTRANCITYのリニューアル方針について社内で検討を重ねました。TRANCITYはレガシーな作りで機能拡張が困難だったこともあり、リニューアル版は現行版を改修するのではなく、新規開発を行うことを決断。既存ベンダー2社に加え、クラスメソッドにも開発支援を依頼し、2025年6月から新バージョン「TRANCITY Nebula」の開発を本格的にスタートさせました。
クラスメソッドはサービス全体の画面設計やUIデザインに加え、アーキテクチャの見直し、管理画面や生成AI関連の機能開発を支援しました。
特に生成AI関連は、TRANCITY Nebulaで初めて盛り込まれた新機能です。機能は大きく分けて2つあり、1つはアップロードした動画の内容を解析し、検索用のタグを自動生成するもの。もう1つはチャットボットで、自動生成したタグを基にしたデータ検索や、ヘルプページを引用した回答などを実現するものです。熊谷さんは「今回のリニューアルで絶対に実現したかったもの」と話します。
「新機能の開発では、クラスメソッドが持つ生成AIの知見をフルに活用していただきました。たとえば生成AIの選定では、クラスメソッドにさまざまなモデルで検証を行ってもらい、精度や反応速度、コストなどを総合的に判断した結果、Claudeを採用しています。さらに、ClaudeをAmazon Bedrock経由で利用することで、データをAWS環境内で管理し外部サービスとのやりとりを避けられることも、Claudeの採用を後押しする大きな要因となりました」(熊谷さん)
開発手法のデファクトスタンダードを吸収
画面開発では、既存ベンダーとクラスメソッドの支援担当部分を完全に切り分けることが難しく、ベンダー同士で直接調整が行われる場面も少なくなかったといいます。
「クラスメソッドは後から開発に参加した形ですが、キャッチアップがとても速く、すぐに自走できるレベルになっていて驚きました。既存のコードを生成AIに読ませ、現状の仕様を詳細にまとめた資料も作成されていて、『そこまでやるのか』と感心しましたね」(吉永さん)
また、熊谷さんは「クラスメソッドの開発手法から、最近のデファクトスタンダードを学べたことも大きな収穫の1つ」と話します。
「それまではタスクやバグ一覧はExcelで管理しており、デザイン面ではPowerPointをベースに画面設計を行っていました。今回は前者にBacklogやGitHub、後者にFigmaを活用することで、管理や共同作業の効率が大幅に向上した実感があります。既存ベンダーもクラスメソッドのやり方を吸収しており、今後の開発にもつながる基盤が作れたと思っています」(熊谷さん)
構成の見直しにより副次的な効果も
TRANCITY Nebulaは2026年3月に正式ローンチされました。4ヶ月におよぶ現状分析を起点にUI/UXを刷新した結果、操作性は大きく向上。社内テストでは「初めて触る人でも迷いなく使えていた」と熊谷さんは振り返ります。
「使い方の説明を一切せずに社内へ展開したのですが、今までと違う場所に移動した機能も含め『どこにあるか分からない』といった問い合わせはほとんどなく、スムーズにすべての機能を使いこなしていました。旧バージョンで散見されたエラーもほぼなくなり、UI/UXの刷新は狙いどおりの効果が出ていると感じています」(熊谷さん)
チャットボットとヘルプページの拡充により、検索性も向上しました。
「新しく加わったメンバーからも『ヘルプが充実していて助かる』という声が挙がっています。まずチャットボットに聞けば使い方がひととおり分かる状態になり、オンボーディングの負担が確実に減りました」(熊谷さん)
また、アーキテクチャやAWSの構成を見直したことは、当初想定していなかった副次的な効果ももたらしました。
「それまではEC2に動画をアップロードしていた構成を、S3への直接アップロードとファイルの分割送信(マルチパートアップロード)に切り替えました。これによりインフラコストが削減できたとともに、アップロードにかかる時間がこれまでと比べ最大87%削減され、『爆速』と言っていいほどになりました。くわえて『何%アップロード済み』と進捗を表示することもできるようになり、非常に満足しています」(熊谷さん)
実現したい世界に向けて「次の一歩」を踏み出せた
その後もTRANCITY Nebulaは開発を継続しており、クラスメソッドも引き続き開発支援を行っています。
「TRANCITYシリーズは、現実空間をデジタル空間上に再現することで、時間や場所を選ばずに現地確認ができる世界を目指しています。ゆくゆくは『現在管理している構造物のなかでクラックがあるものは?』など、自然言語で構造物の異変を確認できるようにしたい。今回のリニューアルで基本的なアーキテクチャやUIを見直したことにより、その一歩を踏み出せた感触があります」(熊谷さん)
現在は鉄道事業者で主に活用されているTRANCITYシリーズ。今後はさらに他の業界への展開も目指していると吉永さんは話します。
「道路や電力などの生活インフラや、製造業のプラントなど、TRANCITYはさまざまな現場で活躍できるポテンシャルを秘めています。鉄道以外の業界については、業務知識や商習慣に疎い部分がありますので、クラスメソッドが持つ多種多様な業界の知見をお借りできればと考えています」(吉永さん)
「いかなる業界でも、『生成AI』は重要なキーワードとなっています。『生成AIがなければ業務が回らない』という世界が目前まで迫っているなかで、より良いプロダクトを作り続けるためにも、引き続きクラスメソッドに支援をお願いできればと思います」(熊谷さん)
デジタルツインプラットフォームにより、人手不足などの社会課題の解決に貢献する同社。これからもクラスメソッドは、フロントエンドからバックエンドまで、さまざまなレイヤーの技術支援を通じて同社の思いに応えてまいります。


