パートナーマーケティングのスタートアップとして、パートナービジネス管理ツール「PartnerProp」を提供する株式会社パートナープロップ。急成長を続ける同社は、クラスメソッドのスタートアップ向けAWS活用支援プログラムを採用し、BI分析サービスAmazon Quick(旧Amazon QuickSight)に関するアーキテクチャレビューや、生成AI機能の実装に関する技術支援などを依頼しました。取り組みの内容と成果について、CTO(最高技術責任者)の福森賢さんにお話をうかがいました。
パートナーマーケティングを支援する「PartnerProp」で日本のリーディングカンパニーへ
パートナープロップは、大手サービス会社のSaaS事業部でパートナービジネスの企画・戦略を担ってきた代表が、2023年5月に設立したスタートアップです。現在は「共創を、社会のエンジンに。」をミッションに掲げ、PRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)領域のSaaS「PartnerProp」を開発・提供しています。PRMとは、代理店や販売店といったパートナー企業との関係を管理し、パートナー経由の売上を最大化する仕組みのことで、欧米では急速に市場が拡大しています。
「ビジネスで重要な役割を果たすパートナーチャネルですが、日本ではDXが十分に進んでおらず、知見も十分とは言えない状況でした。そこに着目した代表が、パートナービジネスの課題解決を目指して設立したのがパートナープロップです。世界的に急速に拡大しているPRM領域において、グローバルへの展開も視野に入れながら、日本発のテクノロジーを世界に発信していきたいと考えています」(福森さん)
同社に対する市場からの期待は高く、2024年8月には創業初期のシードラウンドで総額2.3億円を調達しました。その後、自社でもパートナーマーケティングを積極的に活用して成長を加速させた結果、2025年1月にはシード後の成長フェーズへの投資である「シリーズA」へと進み、累計9億円の資金調達を実現しています。
同社が提供するPartnerPropは、パートナー取引における販売先の可視化、進捗・変更履歴の管理、案件重複の把握を1つのプラットフォーム上で実現するツールです。従来のパートナーチャネルは企業間をまたぐ性質上、パートナーの活動状況の可視化や、パートナーと連携した販売促進の仕組みづくりが難しいという課題がありました。PartnerPropを活用することでこうした課題を解消し、パートナーチャネルの成果を最大化することができます。現在までに、数多くのパートナーを抱えるエンタープライズ企業から、数十社を管理するスタートアップまで幅広い企業に導入され、実績を重ねています。福森さんは創業メンバーとして同社の立ち上げに参画し、PartnerPropのプロダクト開発を一貫して担ってきました。現在はCTOとして10数名のエンジニアリングチームを牽引しながら、自らもエンジニアとして開発の最前線に立っています。
「スプリント開発を採用し、週1回のペースでリリースや機能改善を進めています。ユーザー企業が多くのパートナーを効率的に管理・運用できるよう、AIによるワークフローの自動化に注力しているほか、セキュリティの強化にも取り組んでいます」(福森さん)
クラスメソッドがスタートアップのAWS活用を促進
順調にユーザー企業を獲得してきたPartnerPropですが、リリースから約2年が経過するなかで、徐々に技術的な課題も明らかになってきました。
「PartnerPropでは、市場規模やBtoBビジネスでの実績、エンジニアのスキルセットなどを考慮し、AWSをプラットフォームに採用しています。設立当初はプロダクト開発に集中せざるを得ませんでしたが、事業が軌道に乗ってきたタイミングでアーキテクチャを改めて見直し、技術的負債の解消に着手することにしました」(福森さん)
プロジェクトは2026年2月から7月にかけて段階的に実施しました。その中で、「Amazon Quickのアーキテクチャレビュー」「プラットフォームのセキュリティ診断/マルチアカウントレビュー」という2つのレビューをクラスメソッドに依頼しました。
PartnerPropでは、Amazon Quickをユーザー向けの可視化・分析機能として提供しています。特徴的なのは、Amazon QuickをAPIとして外部提供するのではなく、プロダクト本体に組み込み、一体型の機能として提供している点にあります。今回、Amazon Quickのマルチテナント構成や管理権限まわりについて、サービスの成長に伴うスケール時に課題が生じないかを事前に検証したいと考え、クラスメソッドにレビューを依頼しました。
「Amazon Quickによる分析機能の提供を開始してから約1年が経過し、スケールに耐えられるかを事前に検証したいという考えが強まっていました。そこで、スケーラビリティの観点からレビューを依頼したところ、全体の方向性としては間違っていないことが確認できました。くわえて、いくつかの改善点の指摘を受け監視設定や組織設定に関するアドバイスもいただいたことで、チームメンバーの知見が広がりました」(福森さん)
また、AWSのベストプラクティスに沿ってセキュリティ強化を進めるPartnerPropでは、セキュリティ対策を定量的に測定する「AWSセキュリティ成熟度モデル」を活用しています。しかし、自社だけの判断では見落としが生じる懸念もあったことから、クラスメソッドのアドバイスを受けながら診断方法を見直すとともに、抜け漏れの確認を実施しました。加えて、マルチアカウント構成についても、クラスメソッドにAWS Organizationsを活用したマルチアカウント構成のベストプラクティスに基づくレビューを依頼しました。
「可用性とのバランスを取りながら、現時点で必要な対策を優先度順に見極める必要がありました。また、取得済みのISMS認証(ISO/IEC 27001)の要求事項にも沿っていく必要があります。そういった難しさがある中で、セキュリティ診断やマルチアカウントレビューにより、自社の取り組みに対して客観的なお墨付きをいただけたことで、自信を持ってサービスを提供できるようになりました」(福森さん)
Amazon Bedrockの導入により生成AI機能を実装
AI機能の実装を進める同社のプロダクト開発チームでは、APIの開発や、RAG(検索拡張生成)の構築などに取り組んでいました。これらにはマネージドサービスのAmazon Bedrockを採用。クラスメソッドに相談しながらデータ分析機能や検索機能などを実装しました。
「開発チームにとってAmazon Bedrockの利用が初めての経験で、運用面で確認したい点がありました。そこでクラスメソッドのエンジニアに『Amazon Bedrockが停止した場合はどう対応するべきか』といったように、具体的なシナリオをもとに、注意点や必要な対策についてアドバイスを受け、レビューも依頼しました。その結果として、Amazon Bedrockを利用する際の懸念点が解消され、2026年7月には新たなAI機能をリリースできました」(福森さん)
専門家の的確なアドバイスにより開発スピードを加速
約半年にわたるプロジェクトは、オンラインコミュニケーションを基本とし、週1~2回の定例ミーティングを軸に、BacklogとSlackによる不定期の技術相談を組み合わせながら進めました。プロダクト開発チームの複数のメンバーが関わったプロジェクトへのクラスメソッドの支援について、福森さんは「判断の確度が上がった」と評価しています。
「私たちが漠然と抱えていた技術的な論点に対し、問題点を的確に指摘していただいたり、具体的な開発事例を紹介していただいたり、トラップになりやすい点をあらかじめ共有していただいたりと、幅広く相談できた点が最大のメリットでした。クラスメソッドのエンジニアは『PartnerPropってどんなサービスなの?』といった問いから始まりプロダクトを深く理解したうえで支援してくれます。PartnerPropの複雑なアーキテクチャも把握したうえで話を聞いてくださるため、プロダクトオーナーとしても安心感がありました」(福森さん)
クラスメソッドのスタートアップ向け支援に対しても、開発スピードが重視されるスタートアップとして有効性を実感したといいます。
「スタートアップのプロダクト開発では、瞬時の判断が求められます。しかし、AWSの技術進化は速く、自社に知見がない領域では決断に躊躇してしまう場面も少なくありません。専門家の視点からアドバイスを受けることで開発チームの選択肢が増え、打てる施策の幅が広がった感覚があります。開発スピードをさらに加速していくうえでも、技術支援のありがたさを強く感じました」(福森さん)
パートナーマーケティングを支援する同社として、AWSジャパンとクラスメソッドのパートナーシップにより、両社から一体的に支援を受けられる点も高く評価しています。
「クラスメソッドの技術的な知見はもちろんのこと、AWSと連携した形で支援を受けられることは、パートナービジネスの観点からも安心感があります。今回、意思決定に必要な情報を両社から得られることの価値を改めて実感しました」(福森さん)
ビジネスのフェーズに応じて技術支援の活用を検討
スタートアッププログラムによる技術支援は一区切りを迎えましたが、今後もPartnerPropのサービスがスケールするタイミングや、新規プロダクトの開発フェーズに応じて、技術支援の活用を検討しており、クラスメソッドとの関係を継続していく考えです。
「サービスが拡大するにつれ、プラットフォーム全体のアーキテクチャの見直しや、セキュリティ強化の必要性も高まります。加えて、AI機能の拡充によりトランザクションの大幅な増加も見込まれます。今後起こりうるさまざまな技術課題に対応するためにも、クラスメソッドとのパートナーシップをさらに強化していきたいと考えています」(福森さん)
パートナーマーケティングを通じて日本企業の成長を支えるパートナープロップ。クラスメソッドは今後も同社の成長と、サービスの機能強化に貢献してまいります。


