AI駆動開発の全社展開に向けて
実践的なトレーニングで体系的な知識を習得

日本ゼオン

デジタル統括推進部門 デジタルセキュリティガバナンス部
鈴川竜司 様、磯航 様
日本ゼオン
公開日:2026年10月15日
BEFORE
  • AI駆動開発が一部のエンジニアに限定
  • AI駆動開発初期段階のため体系的な知識の習得が必要
  • Spec駆動開発に関する知見の習得が必要
AFTER
  • AI駆動開発を全社展開するための基盤を確立
  • Kiroを活用したAI駆動開発の体系的な知見を獲得
  • 製造業に合わせたカリキュラムで実践的な知識を習得

タイヤに使われる合成ゴムや、電子機器に使われる高機能樹脂などの製造を手がける日本ゼオン株式会社。現在、同社では開発生産性の向上を目指し、AI駆動開発の全社展開を計画しています。その取り組みの一環として、クラスメソッドが提供する「AI駆動開発実践プログラム」を実施し、10名のエンジニアがAI開発プラットフォームを活用したハンズオンを通じて、イメージを具体化しました。プログラムの内容と成果について、デジタル統括推進部門の鈴川さんと磯さんにお話をうかがいました。

AI駆動開発の全社展開を見据えて体系的な知識の習得へ

1950年に塩化ビニル樹脂を製造販売する会社として創業した日本ゼオン。現在は、ナフサに含まれるC4・C5留分から独自技術で抽出した原料を用いて、合成ゴムや合成ラテックスなどの「エラストマー素材事業」と、化学品・情報材料・高機能樹脂・高機能部材などの「高機能材料事業」を展開しています。

同社は、中期経営計画「STAGE30」において、2030年のビジョンを「社会の期待と社員の意欲に応える会社」と定め、SDGsへの取り組みを通じてビジョンの達成を目指しています。中期経営計画を推進するうえで鍵となるのがDXへの取り組みで、2020年には全社のDX推進を担う組織としてデジタル統括推進部門を新設しました。

日本ゼオン 「デジタル統括推進部門は、日本ゼオンにおけるデジタル変革を推進し、新事業の創出と拡大を支援することを目的に設立されました。現在は、各事業部門と共創しながらDXを推進する『改革推進室』、ITインフラを担当する『デジタルシステム管理部インフラグループ』、アプリケーション開発を担う『デジタルシステム管理部システムグループ』、セキュリティとガバナンスを担当する『デジタルセキュリティガバナンス部』の4グループ体制で変革を推進しています」(鈴川さん)

DXをさらに加速するうえで欠かせない取り組みが、近年急速に普及しているAI駆動開発です。同社では、2025年頃からデジタル統括推進部門の一部のエンジニアがバイブコーディングに取り組んできました。ほとんどのシステムをAWS上で運用していることから、AI開発プラットフォームには、AWSとの親和性が高く、AWSアカウントの請求とも統合できる「Kiro IDE/CLI(以下、Kiro)」を採用しています。

一方で、独学のまま全社展開を進めることに不安もあり、AI駆動開発を体系的に学ぶため、トレーニングを受講することにしました。

「目的は2つあります。1つは、先行利用しているメンバーが、自分たちの進め方が正しいことを確認し、今後の方向性に確信を持つことです。もう1つは、AI駆動開発に関心を持つ開発メンバーに、実業務に近い体験を通じて有効性を実感してもらうことです。先行メンバーの間では、コード生成から仕様書作成、プロジェクト管理、運用に至るまでをプロンプトベースで行うSpec駆動開発という新たな手法が登場する中、全面的に採用すべきか迷いがありました。方針を固めるうえでも、プロの知見を借りたいと考えていました。業務が手一杯で何から手を付けていいかわからないメンバーには、共通の知識や用語を身に付けてもらい、AI駆動開発への理解と組織全体の共通認識を醸成したいと考えました」(鈴川さん)

カリキュラムを製造業向けにカスタマイズし実務に即したトレーニングを実施

トレーニングの実施にあたって鈴川さんは、当時、IaC実行環境を構築する別プロジェクトで技術支援を依頼していたクラスメソッドに相談し、「AI駆動開発実践プログラム」の採用を決めました。

「IaCの実行環境を統一するプロジェクトでは、クラスメソッドの提案内容にAI活用が随所に組み込まれており、AIに関する知見の豊富さに驚いていました。実際にKiroを使ったコーディングエージェントやレビューエージェントなどを開発していただき、運用を効率化できました。さらに、AI関連のセミナーやトレーニングの開催実績も豊富でしたので、クラスメソッドに依頼するのは自然な流れでした」(鈴川さん)

トレーニングは2026年3月に、1日完結のワークショップ形式で実施しました。参加者は、デジタル統括推進部門から、Kiroを先行利用しているデジタルセキュリティガバナンス部の鈴川さん、磯さんなど3名と、改革推進室からAI駆動開発の初心者や経験が浅いメンバー7名の合計10名を選定しました。

カリキュラムは特定の技術領域に偏らず、システム構成から開発プロセスまで幅広く学べる内容とし、AI駆動開発を実践するための基礎知識を体系的に習得できるよう設計しました。

「難易度の設定には悩みましたが、まずは基礎をしっかり身に付けてもらうことを重視しました。一方で知識の網羅性も意識し、フロントエンドからバックエンドまで対象を広げています。さらに、実装だけでなく、テストやレビューなども含め、開発プロセス全体を学べる内容を目指しました」(鈴川さん)

トレーニングは製造業向けにカスタマイズし、座学とハンズオンを組み合わせて実施しました。ハンズオンでは、製造機器のデータを取得し、モニタリングダッシュボードで可視化するまでの一連の流れを、参加者一人ひとりが実際に開発しました。

「ハンズオンの実施にあたっては、エンジニアが日常業務で利用している全社標準の統合開発環境にKiroを組み込みました。別環境を用意すると、トレーニング終了後に使われなくなってしまう可能性があります。そこで、トレーニング終了後もそのままKiroを利用できるよう、社内と同じ環境で実施しました」(鈴川さん)

経験者から初心者までがAI駆動開発の可能性を実感

日本ゼオン
トレーニングを終えた今、磯さんは「大いに学びになった」と振り返っています。

「業務では主にKiro CLIを利用していたため、Kiro IDEや新しい開発手法に触れられたことは新鮮でした。Spec駆動開発の考え方を段階的かつ網羅的に学べたことに加え、モニタリングダッシュボードを題材に、UI画像をAIに読み込ませてデザインを改善するなど、実務に直結するハンズオンを体験できたことも大きな学びとなりました。また、テスト自動化フレームワークを活用したエンドツーエンドテストの自動化など、AIを開発プロセス全体で活用する実践的な内容も盛り込まれており、今後の業務に生かせる知識や手法を習得できたと感じています」(磯さん)

AI駆動開発になじみの薄かった改革推進室のメンバーからも大きな反響があり、トレーニング後には「AI駆動開発のイメージがつかめた」「Kiroの活用方法を理解できた」「新しい知見を得られた」といった前向きな感想が寄せられました。

「しばらく開発から離れていたリーダークラスの参加者も、ハンズオンを自力で完遂していました。その参加者が『今のAIはこれだけ進化しているのか』『こんなに簡単にできるのか』と驚きの声を挙げていたことが印象的で、多くの参加者にAI駆動開発の可能性を実感してもらえたと感じています」(鈴川さん)

トレーニングの内容についても、クラスメソッドの実体験に基づくカリキュラムや教え方を評価しています。
日本ゼオン 「Spec駆動開発については、実際の開発でどこまで使えるのかが最大の関心事でした。クラスメソッドの講師からは、Spec駆動開発が有用な手法である一方、現時点では発展途上であり、実務ではバイブコーディングと組み合わせるアプローチが現実的であることを、実際の経験を交えて説明いただき、状況に応じて柔軟に使い分ける考え方を学べたのが収穫でした。新しい技術や開発手法が次々と登場する中で、理論だけでなく、実践的な活用方法を学べたと感じています」(鈴川さん)

「カリキュラムは、ツールを開発業務でどのように活用するかを、具体的な手順とともに学べる内容でした。講師の方には、テストユーザーの準備方法など実務に即した質問にも丁寧に回答いただき、ご自身の経験に基づくノウハウを共有していただけたことが印象に残っています」(磯さん)

誰もが気軽にAI駆動開発を始められる環境を提供

今後は、今回トレーニングを受講した改革推進室のメンバーを中心にAI駆動開発を加速し、全社に展開していく構想です。現在、同社では社内標準の開発言語としてPythonを採用し、各工場や事業部門が自律的にアプリケーションを開発できる環境の整備を進めています。

しかし、AI駆動開発に慣れていない開発者に対しては、単に「Kiroを使って開発してください」と伝えるだけでは、スムーズな展開は期待できません。そこで、安全なコーディングルールやベストプラクティスを組み込んだ「Python Starter Kit」を開発中です。開発者がAIに「Pythonで開発したい」と指示するだけで、必要なテンプレートや開発環境が自動で展開され、安全なルールに沿って開発できる環境の構築を、2026年度中の完成に向けて進めています。

「Python Starter Kitの展開に向けて改革推進室のメンバーと分科会を立ち上げ、仕様やルールの策定を進めています。利用者のハードルを下げながら展開し、実際に開発工数削減などの効果を実感してもらいながら、AI駆動開発を全社に広げていきたいと考えています」(鈴川さん)

クラスメソッドに対しては、今後もSpec駆動開発やAI駆動開発に関する最新情報や運用ノウハウの提供を期待しています。

「現在はKiroを利用していますが、高性能と評判のClaude Codeにも関心があります。自社での評価と知見の蓄積を進める必要があるため、Claude Codeの活用実績も豊富なクラスメソッドには、最先端のAI駆動開発について引き続きご教示いただければありがたく思います」(鈴川さん)

「AI駆動開発が広がると、トークン消費量の増加も課題になります。コストと性能はトレードオフですが、トークン単価の低いオープンウェイトモデルの活用方法も含め、大規模言語モデル全体の最新動向についてうかがいたいと考えています」(磯さん)

実践的なカリキュラムを通じて、AI駆動開発の体系的な知識を習得した日本ゼオン。クラスメソッドは今後も、同社のAI駆動開発の全社展開を継続して支援してまいります。

この事例は生成AIコンサルティングをご利用いただいています

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