全社員が自己のクラウドスキルを定量的に把握しながら学習に進める「スキル評価シート」を作成

MS&ADシステムズ

アーキテクト部 クラウドCoEグループ
グループ長 伊藤倫志 様
MS&ADシステムズ
公開日:2026年7月21日
BEFORE
  • メインフレーム・オンプレミス環境からクラウド環境への移行が加速
  • 社員の大半がメインフレーム・オンプレミス人材
  • 内製でのクラウド人材育成が急務
AFTER
  • AWSのスキルに関する体系的な評価指標の確立
  • スキル項目と学習手段の紐付けによる自発的学習の実現
  • スキル評価シートを活用した成功事例の創出

MS&ADインシュアランスグループのIT戦略を担うMS&ADシステムズ株式会社。オンプレミス環境からクラウドへの移行加速を目指す同社は、クラウド人材の体系的な育成を検討。クラスメソッドに支援を依頼し、約500項目にわたる指標を収録した「スキル評価シート」を作成しました。現在は全社活用に向けた準備段階として、スモールスタートで活用しています。スキル評価シート作成の経緯とプロジェクトについて、アーキテクト部 クラウドCoEグループの伊藤さんにお話をうかがいました。

クラウドリフトを加速するにあたり、内製人材の育成が急務に

MS&ADシステムズは、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険をはじめ、三井住友海上あいおい生命保険、三井住友海上プライマリー生命保険などで構成されるMS&ADインシュアランスグループのシステム中核会社です。1,800人以上の社員が在籍し(2026年4月1日時点)、保険システム全般にわたる企画・設計・開発・運用業務を担っています。

2030年度を見据えたMS&ADグループの経営計画において、「変革・創造・成長を支える安定的なシステム構築」を経営戦略として掲げている同社は、「IT構造最適化」をキーワードに、Fit to Standard、クラウド活用、データセンター最適化、ホスト資産縮小を推進しています。2024年には推進組織としてアーキテクト部を新設し、クラウド活用をクラウドCoEグループがリードしています。

「クラウドCoEグループのミッションは、クラウド活用率を高めることにあります。現在は技術情報が豊富なAWSをベースにクラウド活用を進めていく予定です」(伊藤さん)

クラウドへの移行を加速するにあたり、課題として浮上してきたのが人材育成です。現在、多くの社員がメインフレームやオンプレミス環境の開発・運用に従事しており、内製化を見据えたクラウド人材の育成が急務となっていました。

「これまではキャリア採用や外部パートナーの活用でカバーしてきましたが、外部依存度が高い現状ではスピード感を持った対応が難しくなります。そのため、内製化の推進が最大の課題となっています」(伊藤さん)

AWS Summitで偶然目にした「スキル評価シート」に着目

クラウド人材の育成に課題を抱えていた伊藤さんと、クラスメソッドとの出会いは偶然でした。きっかけは、伊藤さんが2025年6月に開催されたAWS Summit Japan 2025を訪れた際、クラスメソッドのブースにて「AWS学習フォローアップ支援」のメニューとして紹介されていたスキル評価シートを目にしたことでした。

MS&ADシステムズ 「まさに、自分が実現したかったことが目の前に現れた感覚でした。すぐにクラスメソッドの担当者へ相談したところ、『目的を明確にしたうえで取り組むべき』とアドバイスを受けました。体系立てて設計したい、独自にカスタマイズしたいという要望にも応えていただけるとのことで、迷うことなく支援を依頼しました」(伊藤さん)

1,800人規模の社員を抱える同社にとって、全社的なクラウド人材の育成を体系的に推進することは容易ではありません。そこで伊藤さんが目指したのは、エンジニアが身につけるべきスキルと学習手段を紐づけた評価シートを整備し、自律的な学習を後押しする仕組みを作ることでした。

「自己研鑽に励んでいる社員がいる一方、何から始めていいか迷っている社員も少なくありません。そこで、クラウド経験のないエンジニアでも自主的に学べる環境を整備することが重要と考えました。当社では各領域で育成カリキュラムを整備しており、それに沿って学ぶ文化が根付いているため、スキル評価シートも受け入れられやすいと考えました」(伊藤さん)

クラウド初心者でも段階を追って理解が深められる構成を重視

スキル評価シートは、社員のスキルを定量的に評価するための仕組みです。求めるスキルを段階的に整理し、定量的な指標へと落とし込むことにより、スキル状況や成長の変化を可視化し、体系的な育成計画の策定を可能にします。

実際の作成は、4つのステップで進めます。まずはステップ1でスキル評価シートの目的・用途を明確化することから始まります。ステップ2では必要なスキル項目を洗い出し、ステップ3で具体的なスキルを定量的な評価項目として整理していきます。ステップ4で各スキル項目に対する学習コンテンツを紐づけ、評価シートを完成させる流れです。

今回、スキル評価シートの作成は、2025年12月1日から2026年3月末までの4カ月間で実施しました。ステップ1から2では、クラスメソッドの担当者がヒアリングを実施し、伊藤さんがそれに回答する形で要件を整理しました。ステップ3から4では、複数回のレビューを重ねながらブラッシュアップとカスタマイズを進めました。

スキル評価シートの作成にあたり、伊藤さんが特に重視したのは、クラウド初心者でも段階を追って理解を深められる構成とすることでした。

「まずはオンプレミスのエンジニアにもなじみが深い基本的な3層Webアーキテクチャ(Web/AP/DB)から始め、そこからコンテナやサーバーレスといったクラウドネイティブ領域へ進む構成としました。また、インフラ知識が十分でないアプリケーション開発エンジニアでも、VPC、IaC、CI/CDといったクラウド特有の概念を学べる内容にしています」(伊藤さん)

また、すべての本部で活用できるよう、各設問に対する評価基準を管理者、実装担当者、新入社員それぞれに向けて分類し、必要なスキルが習得できる設計としました。

「実際にシステム構築を行う実装担当者と、成果物を承認する管理者では、求められるスキルが異なります。そこで、管理者は5段階で設定した目標到達レベルのうち、レベル2またはレベル4とし、実装担当者はレベル3から5まで、新入社員はレベル1までと、役割に応じて評価・学習できるようにしました」(伊藤さん)

4カ月でプロジェクトを終了、余剰工数でWebアプリ化の演習を実施

プロジェクトは順調に進み、当初の計画より約3週間前倒しでスキル評価シートの作成が完了しました。そこで余剰工数を活用して、AWS利用時のトラブルや事故を整理した「ヒヤリハット集」の作成と、スキル評価シートのWebアプリ化演習にも取り組み、4カ月にわたるプロジェクトを終えました。

「作業は最初から最後までスムーズに進みました。私自身は、クラスメソッドの担当者からの問いに答えていくだけで、自然と形になっていった印象です。予算制約も考慮しながら必要な項目を整理し、コンパクトにまとめていただけたことも感謝しています。余剰工数を活用した追加支援依頼にも柔軟に対応していただき、助かりました」(伊藤さん)

クラスメソッドの担当者に対して、伊藤さんは高いコミュニケーション力と、ファシリテーション力を評価しています。

「ミーティングでは、事前準備が徹底され、最後には必ず宿題を確認して終了する進め方でした。ヒアリングでも、私たちの要望を的確に引き出していただき、技術力だけでなくヒューマンスキルやビジネススキルの高さも感じました。当社としても、学ぶ点が多くありましたね」(伊藤さん)

MS&ADシステムズ

スキル評価シートの全社展開に向けて少人数でのトライアルを実施

完成したスキル評価シートには、約500項目の指標を収録しています。利用者は自身に必要な設問に回答することで、現状のレベルを把握することができます。各項目にはクラスメソッドブログ、AWS公式サイト、Udemy、ハンズオンなどの参考リンクも掲載されているため、自発的な学習が可能です。

2026年度は、2027年度に予定しているスキル評価シートの全社展開に向けた準備期間と位置づけています。現在はトライアルとしてクラウドCoEグループや、伊藤さんが立ち上げた社内コミュニティにおいて運用を進めており、今後は得られたフィードバックをもとに改善を重ねていく予定です。

「社内コミュニティは、AWS初心者向けと、AWS上級者向けの2つを設けました。初心者にはスキルを身につける立場として、上級者には教える立場として参加してもらい、意見を集めています。スキル評価シートを使ったエンジニアに感想を聞いてみたところ、500項目という数の多さに驚く声もありますが、自分に必要な項目を選べばよいと理解したあとは、前向きに活用されるようになっています」(伊藤さん)

基礎学習後の高度なテクニカルスキルの習得へ

モールスタートでスキル評価シートを活用しながら改善を実施した後は、社内全体の人材教育を担当する人材開発部に運用を移管し、全社展開を本格化していく計画です。また、2027年度の新人研修での活用も視野に入れています。

クラウド人材育成の次のステップとしては、全社の底上げに加え、基礎学習後の高度なテクニカルスキルの習得にも取り組む構想です。

「クラウド活用を全社に拡大するためには、経営層やマネジメント層を含めた、マインドセットの転換が欠かせません。クラウドに抵抗感を持つ人の意識変革を促すため、まずはクラウド活用に対する心理的なハードルを下げる施策を進めたいと考えています。また、クラウド上級者にはコンテナ活用やAI支援によるコーディングなど、実践的なスキル習得を進めてもらう必要があります。クラスメソッドには、今後も伴走していただきながら、さまざまな施策を進めていきたいと思います」(伊藤さん)

ITサービスのプロフェッショナルとして、保険・金融ビジネスの変革を支えるMS&ADシステムズ。クラスメソッドはクラウド推進支援を通じて、同社の事業変革を後押ししていきます。

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