「心の琴線に触れるサービスを通じて、日常に感動と価値を提供する」というミッションを掲げ、2022年に設立されたMeltly株式会社。独自に開発したAIモデルを活用し、AIイラストアプリ「Days AI」を提供しています。
同社は「Days AI」のレコメンド機能の改善に取り組むことを目的に、クラスメソッドが主催するハッカソンイベント「Classmethod Craft Lab」に参加しました。得られた成果や、クラスメソッドの支援内容について、開発エンジニアのチャンさん、鈴木さんにお話をうかがいました。
レコメンド機能のアルゴリズム評価が課題に
Meltly株式会社が提供する「Days AI」は、ユーザーがAIでオリジナルキャラクターを自由に作成し、AIイラストを制作、共有できるスマートフォンおよびWebブラウザ向けアプリです。くわえてキャラクターとのAIチャットや、コミュニティでの交流などが楽しめる機能を持ち、累計ダウンロード数は80万超と、順調にユーザーを増やし続けています。
「Days AI」のイラスト機能では、同社が独自に開発した画像生成AIモデルによって、オリジナルイラストの生成が行えます。生成したイラストはコミュニティに投稿でき、「ギャラリー」で他のユーザーが投稿したイラストを閲覧したり、「いいね」やコメントをつけたりすることができます。このとき、ユーザーにどのイラストを表示するかは、「Days AI」内のレコメンド機能に委ねられていますが、リリースから時間が経ったことで、改善の余地が生まれてきたといいます。
「リリース当初は開発スピードを優先していたため、レコメンド機能のアルゴリズムを詰めきれておらず、以前から改善したいという意識がありました。しかし、何をもって『良いレコメンド』と判断するかという評価指標が定義されていない状態だったのです。施策を打っても『良い』『悪い』を判断する物差しがないため、改善のサイクルを回せないという課題がありました」(鈴木さん)
さらに、判断の材料となるログが不足していたため、ログを収集・分析する基盤から開発する必要がありました。ただ、他の緊急度の高い開発テーマが優先されたことで、レコメンド機能の改善は後回しになっていたとチャンさんは話します。
「レコメンド機能は、短期的な収益への効果が見えにくく、セキュリティ施策のように緊急度が高いものでもありません。とはいえ、長期的な視点で見れば、『Days AI』を支える重要な要素です。言わば『重要ではあるが緊急ではない』存在でした」(チャンさん)
腰を据えて取り組む機会として「Classmethod Craft Lab」を活用
2026年3月、同社はクラスメソッドとの定期ミーティングの中で「Classmethod Craft Lab」の存在を知りました。Classmethod Craft Labは、クラスメソッドメンバーズ加入者向けのイベントです。ビジネスや業務に役立つ機能を開発するものであり、期間中はクラスメソッドのエンジニアが要件整理や開発に伴走します。同社は、腰を据えてレコメンド機能の改善に取り組む機会として、Classmethod Craft Labへの参加を決めました。
2026年4月に開催されたClassmethod Craft Labでは、参加企業6社がクラスメソッドのオフィスに集まりました。初日の「Day1」では、AIコーディングエージェントについての座学とハンズオンが実施されたあと、各社に分かれて今回の開発内容についてディスカッションを実施。同社は、レコメンド機能に抱いている課題感を説明し、評価指標の持ち方や、収集したデータの分析手法について、クラスメソッドのエンジニアと意見を交わしました。
「評価指標については、後から柔軟に変更可能とすることも念頭に置き、暫定的に『いいね率』を指標に選びました。これをもとに、データ収集、分析、アウトプットまでの一連の流れを実現する分析基盤について、クラスメソッドからAWSの構成を複数提案していただきました」(チャンさん)
クラスメソッドは、2週間という開発期間や今後の拡張性、データ収集のリアルタイム性なども踏まえた現実的な選択肢として、4通りのAWS構成案を提示しました。中でも、スタートアップゆえ開発にリソースを割きたい同社の事情を踏まえ、インフラの運用負荷を抑えられるマネージド構成を最初に推奨しています。
最終的に採用したのは、Amazon Data Firehoseを通じてAmazon S3にログを蓄積し、Amazon Athenaでデータを結合・集計、結果をAmazon Quick Sightでグラフ化する、サーバレスのデータ分析パイプラインでした。今後の開発でも活用できる汎用性を持つこと、ハッカソンの開発期間で完成させられることなどを考慮したうえでの選択だったといいます。
「自分はAWS自体は触ったことはありましたが、今回の構成にあるFirehose、Athena、Quick Sightは触れたことがありませんでした。クラスメソッドの助けがなければ、自分たちだけでゼロから構成を考えるのは難しかったと思います。経験豊富なエンジニアからベストプラクティスを提示してもらえたのは、とても助かりましたね」(チャンさん)
分析基盤の構築に加え、予測モデルを開発
Classmethod Craft Labでは「Day1」の終了後、2週間の開発期間を経て、成果を発表する「Day2」を迎えます。開発期間では、チャンさんが分析基盤の構築を担当しました。
「Day1で分析基盤の構成を固めることができたので、Claude Codeを使いながら開発を進めていきました。特にAmazon Quick Sightはこれまで経験がなかったこともあり、Claude Codeに要件を伝えながらグラフを整えていきました。自分でドキュメントを調べるより、遥かに短時間で完成に近づけました。苦手な部分を補ってくれるツールだと感じます」(チャンさん)
「Day1」では「分析基盤の構築」をゴールとしてディスカッションを進めていましたが、同社は当初のスコープを越え、分析基盤を活用したレコメンド機能の改善まで開発を進めました。開発を担当した鈴木さんは「目標達成で満足せずに、さらに越えていくのが当社のやり方なんです」と話します。
「『Days AI』では、タイムラインに多様性を持たせるため、複数のアルゴリズムを使用してレコメンドを行っています。チャンさんが構築した分析基盤によって、アルゴリズムごとの『いいね率』が可視化され、全体のパフォーマンスを判断できるようになりました。そこで、アルゴリズム自体の改善や、複数あるアルゴリズムの最適な配分についても、検討を進めることにしたのです」(鈴木さん)
アルゴリズムの改善を行う傍ら、鈴木さんは「”いいね”されやすさ予測モデル」の構築も行いました。これは、ユーザー画面への投稿の表示と、それに対する反応のデータを用いて構築した、レコメンド評価用の予測モデルです。これにより、アルゴリズムごとの「”いいね”のされやすさ」を予測できるようにしたのです。
「個々のアルゴリズムを改善したり、配分を変えたりするたび、実際に運用したデータを収集して評価をするのでは時間がかかります。そこで、運用に移る前に『このアルゴリズムを採用したらどれくらい“いいね”されるのか』をAIに予測させることで、改善のサイクルを早められたらと考えました。開発では、Claude Codeに実装させ、それをCodexにレビューさせるなど、それぞれの強みが出るようにAIツールを使い分けていました」(鈴木さん)
こうしてアルゴリズムの開発が進むにつれ、必要なデータも変化していきました。それに伴う基盤の見直しはチャンさんが行いましたが、ここでもクラスメソッドのサポートが役立ったといいます。
「鈴木さんから新しい方向性を聞いて基盤を見直す必要が出てきたときは、どう対応すればいいか定例ミーティングの場でクラスメソッドの皆さんに相談しながら乗り越えました。開発期間中、こうした相談の機会を持てたことが助けになりました」(チャンさん)
漠然とした課題感を具体策に落とし込めた
「Day2」では、同社CTOの森勇喜さんが発表を担当しました。チャンさんと鈴木さんも参加し、他の参加企業の発表に「刺激を受けた」と話します。
「こうしたハッカソンに参加するのが初めてのことだったので、さまざまな方のアイデアに触れられたのが新鮮でしたね。開発に使われたAWSサービスには初めて聞くものも多く、とても勉強になりました」(チャンさん)
「懇親会で、他の企業の方々と情報交換ができたのも良かったです。エンジニアの先輩方に、この先のキャリア構築について話を聞くこともできました」(鈴木さん)
同社は今回のClassmethod Craft Labを振り返り、レコメンド機能に対する漠然とした課題感から、ディスカッションを通じて「分析基盤を構築する」という具体策に落とし込めた点を大きく評価しているといいます。
「もし自分たちだけで取り組んだら、アルゴリズムの改善から手を付けて、空回りしていたのではないでしょうか。開発期間に入ってからも、定例会議やチャットを通じて密にコミュニケーションを図れたので、迷うことはありませんでしたね。質問をすると、ほぼその日のうちに返答がありましたし、こちらの機能やアルゴリズムを深く理解したうえで回答されていると感じました」(チャンさん)
データ収集・評価・分析による改善のサイクルを回していく
Classmethod Craft Labで開発した分析基盤や予測モデルは、その後も同社のレコメンド機能の改善に活かされているといいます。
「分析基盤により、改めて既存のアルゴリズム群の有用性が明らかになりました。そこで、これまでのレコメンド機能の思想を引き継ぎつつ、新たなアルゴリズムへの入れ替えを進めているところです。入れ替え後も、分析基盤を活用して改善を続けていきたいと考えています」(鈴木さん)
また同社では、今回の評価指標の設計と分析基盤の構築で得られた経験を、「Days AI」全体に横展開していく考えです。「何を計測し、どうすれば成功とみなすのかを最初に設計する」という取り組み姿勢を根付かせていくとともに、データ分析パイプラインで学んだAWSの構成パターンを他の機能開発にも活かしていく方針だといいます。
「今回のClassmethod Craft Labで得た知見は、社内ドキュメントとして残しており、新たに参画するエンジニアのオンボーディング資料としても活用しています」(チャンさん)
クラスメソッドへの期待について、同社はデータ基盤や機械学習領域に加え、コスト最適化やセキュリティ、可用性設計など、サービスの成長に伴い重要度が増す運用面でも相談ができればと話します。
「インフラで困った時にバックアップとしてついていてくれる安心感が一番ありがたいです。社内で分からなかったら、最後は聞けばなんとかなるという存在ですね。また、AWSはサービスの数が多く、どのツールをどう使うのが最適なのか判断に迷うことがあります。AI関連をはじめ、新しいサービスも次々出ていますので、経験豊富なエンジニアにアドバイスをいただけると非常に助かります 」(鈴木さん)
「スタートアップは組織が小さい分、専門領域をすべてカバーすることは困難です。ですので、必要なタイミングで専門家に伴走していただけると心強いですね。Classmethod Craft Labでは、他の参加企業との交流も刺激になりましたので、今後もこうした場を作っていただけると嬉しいです」(チャンさん)
改善のサイクルを絶やさず、AI時代の最先端を走り続けるMeltly株式会社。クラスメソッドは今後もその道のりに伴走してまいります。


